空亡(くうぼう・そらなき)

もとは真珠庵の百鬼夜行絵巻の最後に描かれている火の玉。
これは普通、妖怪ではなく太陽もしくは尊勝陀羅尼の火の玉と考えられており、
絵巻ではこれを見た化け物たちが逃げている。

もともと名前は付けられていなかったが、
荒俣宏「陰陽妖怪絵札」において「空亡」というカードに載ったことで、
ちなみにそこでは空亡は「一日の暦の切れ目」であり
太陽が現れる時間であるといった説明だったが、
『大神絵草子 絆 -大神設定画集-』で陰陽妖怪絵札と百鬼夜行絵巻をもとに
空亡について「実際にいた妖怪です。 真珠庵の妖怪絵巻で最後に登場して、
全ての妖怪を踏み潰すという、まさに最強の妖怪。」
という解説がなされたため、妖怪の名前として広まった。


空亡簡易年表
2002年9月
真珠庵本の絵をもとに作られたフィギュア「陰陽妖怪絵巻 陰の巻」が発売される。
その中に含まれるトランプ「陰陽妖怪絵札」に、
真珠庵本の最後に現れる火の玉を載せた「空亡(くうぼう)」というカードが登場。
ここで荒俣宏が以下のように解説している。

「空からころがり落ちてくる火の玉のような太陽は、まさに闇を破る万能の力といえる。
太陽は、夜の闇を切り裂いて夜明けをもたらすとき、空亡という「一日の暦の切れ目」をついて、
夜の中に割りこんでいく。この空亡の隙間は、どんな妖怪にも塞ぐことができない。
空亡は一日と次の一日との隙間にできるだけでなく、
六曜(大安、友引など、古い日にちのまとまり。今の一週間に近い。六日で一単位になる)と六曜のあいだにも生じる。
六曜のはざまにできる空亡を仏滅という。うめゆめ仏滅を軽んじることなかれ。」

なお、「空亡」自体は荒俣宏『帝都物語』にも登場している陰陽道の言葉である。
この時点ではまだ空亡は本来の意味として使われており、
火の玉は妖怪として認識されてはいないことがわかる。
また、読み仮名は「くうぼう」と書かれている。


2006年4月20日
TVゲーム「大神」発売。主人公アマテラス大神は白い狼のような姿の神である。
ラスボスである「常闇ノ皇(とこやみのすめらぎ)」は、ほとんどの妖怪を生み出し、
天神族をほろぼした存在で、黒い太陽のような姿をしている。
常闇ノ皇は「妖魔の絶対的君主」などと称されているが、まだ空亡の名前は出ていない。


2006年9月29日
TVゲーム「大神」の設定資料集である『大神絵草子 絆 -大神設定画集-』発売。
その中で大神のラスボスである「常闇ノ皇」について、

「常闇ノ皇という名前ですが、デザインしたときは空亡という名前でした。
実際にいた妖怪です。真珠庵の妖怪絵巻では最後に登場して、
すべての妖怪を踏み潰すという、まさに最強の妖怪。
さらに空亡は干支で0番という番号があり、デザインも○をテーマにした、
大神最強にふさわしい敵だと思ったのです。
でも名前が変わり、切なくなったデザインでもありました。
思い入れはたっぷりあります。いつかどこかで、こいつはさらに設定を煮詰めて再登場させたいですね。」

といった設定が明かされる。真珠庵本には空亡といった名は登場しておらず、
先に挙げた「陰陽妖怪絵札」をもとにしている事は明らかであるが、
ここで空亡は「妖怪の名前」として認識され、同時に真珠庵本の火の玉に対し
「空亡と言う名の、すべての妖怪を踏み潰す最強の妖怪」としての属性が付加されている。
妖怪「空亡」の誕生である。


2006年12月10日
インターネット掲示板「ふたばちゃんねる」内「僕の考えたオリジナルキャラを描いてもらうスレ」に、
「空亡(そらなき)」という名のキャラクターが投下される。

「空亡(そらなき)
魑魅魍魎の王。別名を「闇之太陰」
この世とも、あの世ともつかない、暗き世において禍々しい闇を放ち
それからは多くの邪なる者が生まれ、この世の人々に度々害悪をもたらした
空亡は永遠に暗き世を出る事はない。それゆえに天の神々も放置していたが
長い長い月日がたつと、空亡にも感情というものが芽生えた
八百万の昔より見てきた光の世界。「羨マシイ・・・アソコヘ我モ行ッテミタイ・・・」
その想いは日増しに強くなっていき、ついにその巨体を動かし始めた
もしも空亡が暗き世を去り地上に現れれば、世界は闇に覆われ終わりを告げる
神々はそれを防ぐため、暗き世との境目へ一人の少女を向かわせた
はたして少女は空亡を止める事ができるのだろうか・・・」

その後まとめサイト「RPGっぽいモンスター図鑑 Wiki」(http://wikiwiki.jp/rpgpoi/)に掲載され、以下の文が追加される。

「特徴:一切不明。群れ為す影であるとも、無邪気な少女の姿とも、黒い太陽のような球体で あるとも言われる。
あるいは不定形な闇と夜、それに向けられた人々の恐怖こそが、この恐るべき妖怪の正体なのかもしれない。 」

百鬼夜行の最後に現れ、それら全てを呑み尽くし、押し潰す存在。黒き太陽とも言われる。
正体不明の存在であり、基本的な情報すら不足している。古の資料にわずかに実在が囁かれる程度である。
一説によると、同じく太陽を象徴するアマテラス神と戦い、その分霊共々打ち砕いたというが……?

アマテラスの名前が挙がっている事など、「大神」の影響下にあることは見てとれるが、
ここでの「空亡」はもちろんオリジナルキャラクターである。
しかしこの後このページは、他所で妖怪「空亡」が説明される際に広く使われることになる。
現在一般に広まっている空亡のイメージはこれによるものである。
また、この時点で「空亡」の読みが「くうぼう」ではなく「そらなき」と呼ばれるようになった。


2009年8月31日
ジョークサイト「アンサイクロペディア」(http://ansaikuropedia.org/wiki/)の
「ルーミア」の項に以下の文が追加される。
以降、妖怪「空亡」の説明としてまれにこのページの文が使われることになる。

「妖怪ルーミアの元ネタは室町時代の中坊主真珠庵が描いた百鬼夜行絵巻の最後に登場する妖怪亡空である。
妖怪亡空とは荒俣宏曰く「闇を切り裂いて、地上にあらわれた太陽」で中二病全開である。
が、その実力は本物でかの天照大神との戦いにおいては彼女共々分神を打ち砕き、世界を闇・絶望・恐怖・災厄・・・etc・・・で覆い尽くした。

まさに天中殺である。

あまりの強さに時の最高神ZUNが封印・調教・幼女化を施した。
その後、東方Projectにて封印解除裏ボスとしても使える便利な雑魚敵兼おバカキャラとして再登場を果たした。」

ここで空亡は「亡空」という名前になっており、「亡空」表記も少しだけ広まった。
ルーミアとは「東方紅魔郷」の登場キャラクターであり、少女の姿だが闇を操る妖怪である。
闇を纏って球体になるという設定、御札のリボンは強力な力を抑えるためとするファンの解釈などが相まって、
これ以降、空亡はルーミアの元ネタになった妖怪ではないかとファンの間で噂されるようになった。
(ちなみに、本文中にあるZUNとは「東方紅魔郷」ほか東方シリーズの製作者。)


2010年5月28日
「アンサイクロペディア」(http://ansaikuropedia.org/wiki/)の「ルーミア」の項の「亡空」が「空亡」に修正される。


2010年12月21日
「アンサイクロペディア」(http://ansaikuropedia.org/wiki/)の「ルーミア」の項に、
空亡について以下の文が追加される。

「赤い球体から妖怪が逃げ惑う姿が描かれていることから田中貴子の「陀羅尼の火炎」説、
荒俣宏の「闇を切り裂いて、地上にあらわれた太陽」説など神聖な存在と考えられる一方、
おどろおどろしい血の色で表現された妖怪すら逃げ出す存在という見方もあり、
小松和彦が発見した百鬼夜行絵巻ではまさに闇の妖怪として描かれている。
その実力は本物で、かの天照大神との戦いにおいては分神共々打ち砕き、
世界を闇・絶望・恐怖・災厄・・・etc・・・で覆い尽くした。」

ここで追加された記述は真珠庵本やその考察をを元にして書かれており、
これまでに空亡の説明としては存在しなかった文章である。
また、「百鬼ノ図」(日文研本)と呼ばれる百鬼夜行絵巻の最後に出てくる黒雲が「空亡」と同一視されている。
以降、このサイトを直接の参考にしてはいないものの、「百鬼ノ図」の黒雲こそが空亡であるといった説が同時多発的に発生する。
(ただし、この説に関しては妖怪「空亡」は近年生まれた妖怪であると分かっていてあえて言っている人が多い。)


2011年8月23日
「RPGっぽいモンスター図鑑 Wiki」(http://wikiwiki.jp/rpgpoi/)の「空亡」の項目に、
「妖怪「空亡」はフィクションです。」との文が追加される。
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