石妖(せきよう)

『中陵漫録』にある怪異。

昔、伊豆には人が多く、山中で石が多く算出した。
ここで数人の石工が休憩していると一人の女性がやって来て
「一日中働いて疲れているでしょう、私が按摩してさしあげましょう」
と言って一人の肩をもんだ。
それが非常に気持ちよかったので石工はよく眠ってしまった。
そうしてまた一人を按摩するとその人も眠ってしまった。
こうして数人眠ったが、残りの一人はこれをよく見て、
「この女はとても美しくただの女ではないように思える。これは化物だろう。」
と思いここを去り、幸いにも猟師にあい、この事を語った。
猟師は「きっと狐狸だろう」と一緒に来てみると、
女は立ち去り石切場にやって来てを逃げまわった。
猟師が鉄砲の弾を二つこめこれを撃ったところ、石が砕け散るようであった。
怪しく思って二人が行ってみると、石が砕け飛び散っているだけだった。
「おそらくこの女性は石の気の怪なのだろう」と言って眠った人を見たところ、
皆背中を石で按摩したように縦横にひっかき傷があり、
さらに皆は気絶しており大病にかかったようで、
それぞれを家に返して医者や薬によりようやく治療した。
ここにはこの後も往々にして怪しい人が出たと言う。
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