長
冠(おさこうぶり)
「東都の城門にかけて世をのがれし賢人の冠にはあらで、このてがしはのふたおもてありし
侫人のおもかげならんかしと夢ごゝろにおもひぬ。(鳥山石燕「画図百鬼徒然袋」)」
おそらく鳥山石燕の創作と思われる冠の化物。
王莽の政治をよく思わず自ら長安の城門に冠をかけて役職を辞職し
遼東に隠遁したという賢者・蓬萌の冠ではなく、
児手柏の葉のように裏表のある人の面影があるとしている。
多田克己氏はこれを「侫者は賢者に似る」という諺や
「奈良山の児手柏の両面(ふたおも)にかにもかくにも侫人のとも」
という万葉集の歌をもとにしたものとしている。