丸物(まるもの)

『番神絵巻』にある怪物。
ある夕方、内裏へ一塊の黒雲が来て、御殿の上で全く動かなかった。
天皇は非常に重い病を患い、
位の高い僧が集まって非常に大掛かりな祈祷を行ったが、全く効果がなかった。
しばらくして、博士に占わせたところ武士を従えるよう言ったため、
すぐに武士を集め弓を揃え、万人の中から千人を、その中から百人をと選んでいき
最後に一人、頓窪(とんくぼ)という者が残った。
この者に命じたところ、まず弓の様子をあらため、全力で一晩弓矢を行い、
鏑矢一対と狩矢一対のあわせて4本を準備し、
その郎等の嶋国(しまくに)を連れて大床に登った。
まず雲の様子を見たところ、かすかな声で「丸物、丸物(的のこと)」と鳴いて
動きまわり、身の毛もよだち失神しそうなほど恐ろしい様子であった。
しばらくして頓窪が鏑矢を雲へうちこむと、雲がざざめき、鳴く声が途切れなかった。
すぐに二本目の矢を命中させ、大床に落ちた所に嶋国がつづいてとどめをさすと、
それは顔が八寸わずかにあるばかりで目は一つ、手は六本のもので、
名前がわからないので鳴く声をとって「丸物」と言ったそうだ。
これを退治できたのも弓のお陰であり、この話は大きく広まったと絵巻には書かれている。
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