人形神(ひんながみ)

富山県礪波地方に伝わる憑き物。
ヒンナとは人形のことで、
墓場の土を三年の間に持ってきて三千人の人に踏ませてそこから作ったり、
これよりも念の入ったものだと、7つの村の7つの墓場から持ってきた土を、
人の生き血で捏ねて自分の信じる神の形に作り、人のよく通るところに埋めて
千人に踏ませるという。
また、三寸(約9cm)ほどの人形を千個作り、鍋で煮ると1つだけ浮かび上がってくる。
これは千の霊がこもったコチョボという人形だという。

これら人形神を祀ると欲しいものを何でも持ってきてくれ、
用事を言いつけておかないと「今度は何だ、今度は何だ」と催促する程なので、
その家はたちまち裕福になる。
ただし死ぬ時も人形神は離れようとしないため、
祀っているものは死ぬときに非常に苦しみ、地獄に落ちるという。

ある人は人形神をひきはなすため次のような方法をとった。
まずヒンナを懐に入れて川へ入り、人形神が苦しんで笠の上にのぼったところで
そのまま笠を流すと、下に主人がいると思って笠とともに流れていったという。

1920年頃までは、急に裕福になったような家は、ヒンナを祀っているなどと噂された。
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